ナンパと哲学

ナンパ師を経て、色々考えながら僕はやりたいことを見つけた。

初めてのストリートナンパ

ある日━━

 

もう三年前くらいになるだろうか

 

某地方都市に僕は車を走らせていた

 

住んでいたところは田舎町だったため、片道二時間くらいの道のりをわざわざ休日を使って行っていた

 

人混みであふれる都心にいく緊張と期待のドキドキ感

 

それと一緒に車内で聞く音楽や、ナンパの音声を聞くのが僕の中で一つの楽しみだった

 

まだ道端で見知らぬ女性に声をかけたことは過去にない

 

 

 

目的地につき車内の窓から見える都市特有のビルの光群

 

色とりどりの人たちであふれる光景に見とれていた

 

中心街から徒歩十分くらいのパーキングエリアに車を止める

 

中心街に歩く道中にマインドセットしようと思ったからだ

 

 

車から降り、道端に人が多くなるごとに心臓の鼓動が少しづつ高まっていく

 

緊張と恐怖の間で

今日は歩くだけにしようか、なんてふと思っていたが

 

ゲームにおける3秒ルールを思い出した

異性を見かけて3秒以内に声をかけなければ、人間はなにか理由付けをして声をかけられなくなる、というもの。

 

 

僕はTHE・GAMEの世界観が頭の中にインプットされていたため、初めてだったが根拠のない自信がどこかあった

 

海外のPickUpArtistを自分に重ねていたのかもしれない

 

 

そんな中、

道を歩いていると後ろ姿がどこか惹かれる女の子が10メートル先を歩いていた

 

身長158、グレーのジャケットに、スキニージーンズを履いたどこにでもいそうな服装だ

 

 

 

僕は3秒ルールを思い出し、早歩きでその女の子に近づいた。

 

心臓がバクバクなる━━

 

周りの目が急にきになる━━

 

しかしルールはルールだ

 

あまり人が周りにいなくなったのを確認した、チャンスだ

 

「すいません」

 

彼女が振り向く

 

「大丈夫ですか?」

 

彼女「?」

 

「いや、歩き方変だなって思って」

 

 

「てか、ハーフっぽいね」

 

彼女「え、違いますよ」

 

彼女警戒しつつも少しだけ笑顔になった気がした

 

緊張の中でふいにあたりを見渡す

 

不思議と声をかけている自分が少し誇らしく感じた

 

 

「なにしてるの?てかちょっとだけお茶しません?」

 

 

彼女「えー」

 

「ちょっとだけなら大丈夫?」

 

彼女「じゃあ少しだけなら」

 

連れ出しなんてしたことないからどこに行くか迷った末

 

マクドナルドにいつのまにかついていた

 

お互い100円コーヒーを注文し

 

飲みながらたわいもないことを話した。

 

彼女「名前なんていうの?」

 

「タクミだよ」なんて偽名を使ったり

 

彼女はキャバクラで働いているなんて話もしたかもしれない

 

これが連れ出しか、なんて感覚を味わいながら彼女とセックスしようなんて到底思えなかった。

 

 

 

40分くらいして店をでる

 

僕は早く彼女と別れたかった

 

連れ出しをした、という一つの目標をやり遂げ

それ以上のことは考えられなかったからだ

 

 

 

彼女は友達が迎えに来ると話していたから、道端でそのままラインだけ交換した。

 

 

「じゃあね」

 

彼女が手を振り返す

 

なぜか彼女はこちらを振り返った

 

 

彼女の後姿が見えなくなった

 

 

 

「これがナンパか」

 

ふとラインに目をやると彼女のラインが追加されていなかった

初めてのライン交換で緊張して彼女を追加せずに画面を閉じてしまっていたのだ

 

 

 

 

「まぁいいか」

 

僕は、まるですごいことを成し遂げたかのような達成感に包まれていた

 

 

「俺は、凄腕ナンパ師だ」

 

 

「今日から、いろんな女を食いまくってやる」

 

 

 

 

自信に満ち溢れたその男は軽やかな足取りで人混みの中に消えていった━━

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の刹那的な時間

 

だがこのことは一生記憶に残るだろう

 

もう決して会うことのない彼女は僕の記憶の中にいまでもいる。