初めてのクラブ
ある日━━
某地方都市にて僕はとある箱の中にいた
激しい音楽に身を任せ薄暗くそれでいて明るい
若い男女がお酒を飲み、踊り狂い、時にはそのまま男女が街中のどこかに消えていく…
そんな毎夜、非日常のようなことが繰り広げられている箱庭だ。
そんなところに一人で佇んでいた。
目的はただ一つナンパをすること。
僕はここに来るまでにいくつかのゲームにおける決まりを設けていた。
そのルールとは…
・3秒ルールの徹底(見つけたら三秒以内に声をかけること)
・逆3でも声をかける(逆3とは男一人に対して女2のこと)
・クラブ内で目立つ
この三つのルールを意識した。
そして自分自身がピックアップアーティストなんだ、と思い込むこと。
受付で1000円を支払い、いかついスキンヘッドのセキュリティーからボディチェックを受け、中に入る。
その際一枚のドリンクチケットをもらえた。
どちらかと言うと少し狭い箱かもしれない、
バーカウンターから箱の端までが約8メートルくらいだろうか。
箱の中を一通り見渡す
「少ないな…」
つまらなさそうに箱の中央にある椅子に座り二人で飲んでいるギャル
男女の友達で来ている仕事終わりらしき若者
女性二人に声をかけている大学生らしき男二人
一人でカウンターで飲んでいる青年などといったところ
僕はまずクラブというものに慣れようと思った。
音楽は主にR&Bが流れていて、好みの選曲だ。
僕はとりあえず箱の一番後ろに陣取った。
腕組みしながら周囲を半分睨んだように見渡す。
さて、どうしようか…
考えた末、ウォーミングアップのためにまずカウンターで飲んでいる青年に声をかけようと思う。
そそくさとバーカウンターの方に歩いていき、バーテンダーにジントニックを注文する。
1口飲み、横目で青年の様子を伺う。
僕「ひとりですか?」
青年「あ、はい」
僕「ナンパとかですか?」
青年「あ、いえ一人旅していてクラブいったことなかったんで来てみました」
僕と同じくクラブに初めて来たようだ。緊張しているようだった。
僕「そうなんですね。僕ナンパしにきたんですよね」
青年「ナンパとかすごいですね(笑)」
僕「今から後ろ振り向いて一番最初に見つけた女の子に声かけにいきます」
僕はそう言って後ろを向き、箱の中央でつまらなさそうに飲んでいるギャル二人に向かって歩いていった。
僕「なんか、楽しそうだね(笑)」
ギャル「まぁね笑」
僕「また、家出してきたんでしょ」
ギャル「違うよ笑」
彼女たちから笑みがこぼれる。
僕「男漁りにきた?」
ギャル「違うしー笑」
僕「このクラブだと俺が一番かっこいいでしょ」
彼女たちは少し笑っていた。
ギャル「ってか、一人なの?」
僕「そうだよ、暇だったから」
少し驚いていたようだった。
しかし、どこかその退屈なクラブの中でなにか面白いものを見つけた。
そのような感情が彼女たちから伺えた気がした。
あくまで退屈しのぎ、そんなスタンス。
軽く話したあと、DJブースの方に体を向け背を向ける。
あまりタイプじゃなかったから、クラブで初めて声を掛けれたこと、それ自体に満足していたため、これ以上はいいかなという感じ。
その後、1人で音楽に身を任せて軽く踊っていた。
すると、後ろから誰かがぶつかる。
後ろを振り向くと彼女たちがいた。
2人のうち大人しかった方がどうやらぶつかってきてたようだ。
どうしていいか分からず、とりあえず笑みを返す。
すると、もう一度ぶつかってくる。
なにかアピールしてきている、そんなことを感じた。
ぼくは構わず、好きな音楽が鳴っていたので踊りに夢中だった。
その後、閉店間際。
1つ番げしとこうかな。と思ってクラブを見渡す。
すると、1人で携帯を弄っている暇そうな娘を見つけた。
周りに3人ほど男がいたが、娘と喋っている様子もなかったので構わず声をかけた。
僕「おつかれさん」
娘「お疲れ様!」
僕「なにしてるの?」
娘「さっきまで、他のクラブいたんだけど、こっちきたんよね」
僕「そこにいるのは、友達?」
娘「ううん、声かけられただけ」
僕「そうなんだ、なんかつまんなそうだっから」
娘「もう帰ろうかなと思ってた笑」
僕「そうなんだ、てかお姉さん笑うと鼻がピクピクなるから面白いね」
娘「なにそれ笑」
僕「今度コーヒーでも飲み行こうよ、ライン教えといて」
娘「いいよー」
ライン交換したのち、疲れていたのでそそくさとクラブを後にする。
言い知れぬ達成感で僕はガッツポーズをしていた。
まとめ
この初めてのクラブの経験で気づいたこと
・女の子は音楽自体を楽しみに来ている子は少ない、声をかけられないとつまらないこと。
・女の子によってはぶつかってきたりアピールすることもあること。
・クラブで音楽を楽しんでいれば女の子はそれを見ていること。